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私の独立:法人設立編


 私は、独立して半年後に資本金300万円で有限会社を設立しました。取締役は一人、社員も私一人です。設立した理由はある企業と契約させていただく条件が、法人であることだったからです。30万円の仕事のために20万円と手間をかけて自分で法人を設立しました。

 契約相手に源泉の手間を取らせることがなかったり、大企業が相手の契約の際は稟議が通りやすいなど、信用面でやはり法人化は優位に働いきました。法人化したことで要した手間を勘案しても、やはり独立した早い段階で、法人を設立したことは間違っていませんでした。ただし、社員が自分だけだった時には、法人はあくまで契約を取れやすくするための道具にすぎませんでした。

 道具ですので、個人と法人の区分というものが自分の中には希薄でした。個人の財布の金が足りなくなれば、法人の銀行口座からまとまった金額を引き出し、あとから領収証を足し合わせて引き出した金額の用途を明らかにしました。

 道具だった法人は、従業員が入社し2名になったときから、単なる道具ではなくなりました。理由は以下の通りです。

 大幸経営では夏の賞与はありません。11月の決算で税引き前利益の金額を内部留保と、国(税金)と、株主と、そして私を含めた社員の4者で一定の率で案分するルールをとっています。11月段階の利益に応じて、1年分の賞与が支払われるのです。社員の取り分を、社長である私と従業員でどう分けるかの割合も決めています。ですので従業員も私も共に利益が出ればその分賞与が増えるし、利益が出なければ賞与は無しです。エクセルで上記比率を入力したワークシートを作成していますので、私も従業員も税引き前利益の金額を入力すれば、瞬時に自分が得ることのできる賞与額が表示されるようになっています。
 
 利益を出すことの恩恵を、従業員と私が共に教授できる仕組みを作ると、同じ視点をもって社務に取り組むことができるようになります。受注が決まれば共に喜ぶと共に、1円でも安い文房具を買おう、電気代を節約しようという節約意識を共有し実践することができるようになります。社内では何ら恥じることなく1円でも安い方法を見つけると、情報を交換し意見を出し合って検討します。

 このような意識の共有をしていると、法人が自分にとって道具であった時代なら、自由に使っていた会社の金を私は使えなくなってきます。お互いに1円でも利益を出そうと言っておいて、私的な支出の領収書を会社の経費として精算したり、大石幸紀個人に入ってきた報酬を、そのまま自分のポケットに入れることは、従業員に対して二枚舌を使うことになってしまいます。私は、自分の財布に入っていた法人のキャッシュカードを会社の金庫に戻しました。通帳も経理担当を任せた彼に渡してしまいました。中小企業診断士の仕事は、法人ではなく、あくまで中小企業診断士大石幸紀でしか依頼を受けられないことがありますが、その場合も私の個人の通帳に入ってきた金額を、そのまま法人の通帳に振替します。

 利益を出すことが私と彼との共有した目標となっていると、毎月の月次決算も、私と彼との共通した楽しみになってきます。6月度の決算はすでに終わらせました。この数値を見ながら利益が出ていれば11月の賞与の期待を共に膨らませ、喜びを分かち合います。また、支出の内訳について一緒に検討会をします。ここでもし、予算をオーバーした費目の原因が私的な支出の場合は、彼に対して誠実さを維持することが出来なくなります。自ずと私は無駄な支出はできなくなくなりました。

 経営者と従業員とで、利益を出すメリットを共有した瞬間から、以上のような理由によって道具であった大幸経営は、私の元を離れました。法人が自分の私利私欲を得るための道具ではなくなった瞬間、自分はこの大幸経営がどうしてこの世の中に存在する意義を新たに考える必要を感じました。その存在意義を表したものが、新たに書き換えた経営理念と行動指針です。

 会社の金が自分のものでなくなり、また経営理念を新たに策定したときから、大幸経営は私の道具から公器となりました。公器にしたからこそ従業員と一体となって適正な利益の追求ができるようになったのです。これらのことは、松下幸之助先生も森井義之先生も以前からおっしゃっており、知識としては自分も知っていました。しかし、こうして経営を実践することで、知識から経験へと転換できているように感じます。心から先人の言葉に共感出来るようになっているように思います。

2008年06月27日

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